第2部 不自由を常と思えば不足なし

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俺の顔? ヒマリが? 思考が追いつかなく、俺の返答が遅れる。 「すみません、やっぱり失礼ですよね!?」 目を開けようとしたヒマリの前に、開けるなと驚かせないようにゆっくり手をかざす。 「良いぜ」 手を下ろすと、ヒマリが小さく頷いた。 言った割には、おずおずと上がる手。 おい、そこは顔じゃない。 「ここだ」 指で軽く触れて誘導する。 お前が触ってくれるんだろ? ヒマリの右の指先が頬に優しく触れた。 「あった…」 「無ければ困るだろ」 そうですねと、ヒマリがクスクス笑う。 ヒマリは左手も伸ばすと、俺の輪郭を確かめるように触れてきた。 いやらしいことも、下心もないのに…。 やべえ…耐えられるか? 「まだ…震えてしまうことがあるんです」 知っている。 知っているが、ヒマリの言葉を聞くために言葉を待った。 「仲間にも失礼ですし、もし犯人にそんな反応していれば取り逃がしてしまいます」 だから、とヒマリは俺の顎に指を走らせる。 「は、恥ずかしいことですが、土方副長にしかお願い出来ません。 練習に…付き合って貰えませんか?」 唇に触れてしまって、頬がさらに赤くなる。 俺の顔も…熱い。 練習なんてしなくて良い。 お前は俺以外誰にも触れなくて良い。 抱き締めたくなる衝動と独占欲を、不屈の精神で丸め込む。 .
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