第2部 不自由を常と思えば不足なし

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「平助さん」 「ほら、今度は俺が…」 「平助さん!」 ヒマリの困った顔が近づいていて、心臓が止まりそうになった。 「わっ!ご、ごめん、考え事してた!」 「平助さん、鼻血が出ています」 え? 鼻の下に触れると指先に血が付着。 ヒマリが心配そうに差し出した手拭いを急いで当てた。 「ありがと、ごめん」 「おいおい平助、何を考えてたんだよ」 ぱっつぁんを睨むと、面白そうに歯を見せて笑われた。 「平助が考えているものとは違うよ。 俺がヒマリに寝技のものなんて貸すわけないだろ」 ほら、と本を開かれる。 パラパラ捲られる文字を追いかけるけど、確かにそれらしき内容はない。 「な?」 今のぱっつぁんの顔、心配して俺を見つめるヒマリに気付かせてやりたい。 思わず握った左手が震えた。 「悪いな、もう一人玄人を忘れていた。 平助だよ。 そりゃあ凄い手練れでさぁ」 「平助さん…?」 「違っ!」 ぱっつぁんのことを信じたヒマリが頬をほんのり染める。 ヒマリに告白したのも、ノリみたいに思われちゃうじゃん! 「俺がヒマリを好きな気持ちは真面目だからな! ぱっつぁんの言うことなんて…いっ!?」 「誰が真面目だと?」 「あわぁああ! は、一君!」 肩を掴まれ、顔だけ上げると夜番明けで戻って来た一君。 肩を物凄ーい圧力で潰されそうになっているんですけど! .
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