いつも恐怖は無知から発生する

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▽▽▽ 響く鐘の音に私達は瞬時に駆け出した。 立ち上る黒い煙が屋根の間から見える。 もう幾日も雨が降っていないせいもあるのだろう。 乾いた空気で、走ると喉の奥が張り付く。 焦げた匂いがいよいよ近づくと、人だかりと火の粉とで軽い混乱が起きていた。 火の回りが早くなっていることを考えれば、火消しにだけ任せられない。 「佐々木君、山野君、ヒマリ君は市井の人に指示を出しながら消火を手伝いなさい。 残りは私に続いて取り残された者の救助、そして延焼を防ぎます」 「はい!」 火事の現場は新撰組に仮入隊した時から数回経験している。 しかし、その数は霜月に入ってから毎夜のように増えていた。 今夜の巡察も不審火に警戒をしていたのだが、悔しいながらまた起きてしまった。 一番近くの井戸から各々の家から調達した桶を使って水を運ぶ。 キョウの町はエドと同じで、ぎゅうぎゅうにひしめきあっているから、対岸の火事では済まない。 皆、真剣に協力している。 火消しが、隣家の壁を壊す。 もう少しすれば、英国から取り入れたポンプ式の放水車が引かれて来るはずだ。 「俺と山野は裏手に回る。 ここは松田に任せる!」 「分かりました、気をつけて!」 佐々木さんが火の手が激しい長屋の裏側を睨む。 これだけの人数もいるし、こちらは何とか対応出来る。 私は出来る限りの声かけをしながは水を運び続けた。 .
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