2958人が本棚に入れています
本棚に追加
/3000ページ
▽▽▽
響く鐘の音に私達は瞬時に駆け出した。
立ち上る黒い煙が屋根の間から見える。
もう幾日も雨が降っていないせいもあるのだろう。
乾いた空気で、走ると喉の奥が張り付く。
焦げた匂いがいよいよ近づくと、人だかりと火の粉とで軽い混乱が起きていた。
火の回りが早くなっていることを考えれば、火消しにだけ任せられない。
「佐々木君、山野君、ヒマリ君は市井の人に指示を出しながら消火を手伝いなさい。
残りは私に続いて取り残された者の救助、そして延焼を防ぎます」
「はい!」
火事の現場は新撰組に仮入隊した時から数回経験している。
しかし、その数は霜月に入ってから毎夜のように増えていた。
今夜の巡察も不審火に警戒をしていたのだが、悔しいながらまた起きてしまった。
一番近くの井戸から各々の家から調達した桶を使って水を運ぶ。
キョウの町はエドと同じで、ぎゅうぎゅうにひしめきあっているから、対岸の火事では済まない。
皆、真剣に協力している。
火消しが、隣家の壁を壊す。
もう少しすれば、英国から取り入れたポンプ式の放水車が引かれて来るはずだ。
「俺と山野は裏手に回る。
ここは松田に任せる!」
「分かりました、気をつけて!」
佐々木さんが火の手が激しい長屋の裏側を睨む。
これだけの人数もいるし、こちらは何とか対応出来る。
私は出来る限りの声かけをしながは水を運び続けた。
.
最初のコメントを投稿しよう!