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「いえ、吉田と言うものに会ったのは私と芹沢さん達だけですから」
差し出されたお茶を受けとると、お礼を言って口をつけた。
温かい。
ほぅっと息を吐く。
リラックスした私を、源さんはお茶のように温かく見ていた。
「松田君が無事で良かったよ」
源さんは私の書いた報告書(始末書)を眺め、自分もお茶に口をつけた。
土方副長の指示により、井上隊も報告書をまとめなければならないのだが、源さんは利き手に擦過傷を負って、うまく筆を握れない。
斯波さんと安藤さんは、憲兵隊の合同現場検分に出席中。
馬越さんと橘さんは、昨夜の騒動で不安の拡がる町内を、少しでも通常通りにするために、寝る間を惜しんで広報隊代表として練り歩いている。
中西さんは早々に隊部屋に戻り、宿院さんも腰を痛め部屋で安静中。
そして三浦さんは、肩から背中を斬られ、傷は浅かったものの、熱をだし、養生室で治療中だ。
運び込まれる時に、背後から斬られたことを恥と感じているらしく、ずっとうつむいたままだった。
近藤局長は労っていたが、土方副長も山南副長も、なにも言わずに三浦さんが運ばれるのを見ていた。
だから余計に、三浦さんがこぼした涙が、新撰組の甘くない現実を引き立てていた。
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