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じゃあ、ここは斎藤隊長の部屋なのかな。
何となく、嗅いだことのある匂いだと思った。
「松平ヒマリ、お前のことは徳川王から聞いた」
「ちょっ、な、な!?」
まさかの斎藤隊長の発言。
何で斎藤隊長が叔父様と会ってるのか、そもそも叔父様は私が新撰組にいるのを存じていたのか、何が何だか分からない。
「わ、わたくしはアイズには戻りませぬ。
いくら叔父上のご命令であるとしても」
「戻すようには命じられていない。
安心しろ」
え?そうなの?
一人で家出人ぶっちゃったのが、恥ずかしい。
ここにいても良いことだと言うのだろうけど。
出家ならまだしも家出をするような身内は、要らない子だってことか。
母上と同じように、私もあの一族に忌み嫌われているのだろう。
「ただ、お前の身は案じられている。
俺は松田の保護を任された」
私の心細い気持ちを察したように、簡素な説明をしてくれる。
斎藤隊長、ごめんなさい。
「…ワガママをお許し下さい。
斎藤隊長を巻き込んでしまい、詫びを申すなら大人しく帰郷すれば良いのですが…」
城の中で、人が見聞きした内容をさらに検閲されたものを聞いて、「万事泰平の世にて苦難なし」と、世間知らずに生きたくない。
身内が築いた世を否定することになるが、力で泣くものがいる限り、私は戦いたい。
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