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あれは鳥…梟?
羽ばたく音も聞こえない、静かな突風は、いとも簡単に狛犬の脳天を突き抜けた。
梟はそのまま弧を描いて、無表情の斎藤隊長の、伸ばしていた片手に止まった。
「流石、一君ですね」
狛犬は、苦しみもだえながら、灰のように細かい塵になって消滅したが、その後に真っ黒な札らしきものが一枚、残った。
狼も総司さんの足元へ、鼻を鳴らしてすり寄ったので、私は体を起こし、それをまじまじと見た。
「あれ…前にも」
「見覚えが?」
「はい。清河焼き討ちで、吉田達に遭遇した時に」
単純に考えれば、今回も吉田が絡んで、佐久間先生か新撰組を狙ったことになるだろう。
「無謀だな。この程度の怪なら、俺達に討たれるであろうことは敵方も承知のはずだ」
斎藤隊長は、梟の頬を撫でながら言った。
ああ、私もそのフワフワの毛を撫でたい。
本人しか触れられないのだから到底無理な話であるが。
あれ?
でも、さっき総司さんの狼が…。
次の瞬間、鋭い殺気を覚えて、刀を構えた。
総司さんに吹き飛ばされたはずの狛犬が、首がひしゃげた状態であるのに、まだこちらへと襲いかかろうとして突進していたのだ。
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