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山南さんが見廻組と奉行所と、辻斬り対策会議へ出掛けちまっているならしょうがねぇ。
嫌々ながらに三条邸宅へ向かう。
一人無言で町を歩けば、誰一人俺を見て良い顔をする野郎はいない。
野郎に喜ばれても迷惑なだけだが、こうもキョウの言葉で言う「怖い怖い」の評判が一人歩きしてれば、いささか不快にもなる。
だが…。
「土方様、一度は抱かれてみたいわぁ」
なんて、女の小さく漏らしたため息混じりの言葉を聞けば、眉間の皺が一筋少なくなる。
そんな可愛いことを言う女を皆抱いてやりたいが、カタギの女を辺り構わず抱いてりゃお縄を食らっちまう。
いや、そもそも、そんなに飢えていないが。
花街にはご無沙汰しているが、商売が絡まない誘いの文は絶えずに届く。
だから余計に野郎どもに疎まれる。
この面と体を使って、敵の女の懐を抱いて探ったことさえあるなんて知ったら、ヒマリは軽蔑するだろうか。
今は色仕掛けは無理だろうな。
ヒマリでないと、俺のあれは反応しなさそうだ。
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