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「違和感を感じた…その理由が分かりました」
一拍おいてから悟ったような表情で、ヒマリは口を開いた。
俺もきっと原田と彦斎も、てっきり彦斎のことかと思っていた。
だが、どうやら違うらしい。
「貴方が捕まったことで、感謝をしてくれる人がいました。
それに、貴方のことを噂する他の人の、安堵するような姿。
だけど、金平糖をくれた女の方は違っていました」
金平糖をくれた女…それに直ぐに反応を示したのは紛れもない彦斎。
机の上に転がる赤い色が無い金平糖に目をやる様子は、揺れる感情が読み取れた。
「佐久間先生に所縁がある方にも関わらず、恨みも憎しみも、貴方が捕まったことの喜びも感じられなかった」
臆することなく続けられる言葉。
自分の命を彦斎に委ねてもいいとでも思っているんじゃねぇのかと疑ってしまう。
「何十何百の人が貴方を恨もうと、その女の方は貴方を恨まない。
でも許すこともない。
何故なら、貴方の全てを、ありのままの事実を受け入れているから」
彦斎へと顔を向けたことによって、簪からさらに血が流れた。
ジワリと流れた血によってヒマリの着物の重ねが赤く染まる。
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