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屯所の建物の前に移動した私達は、残っていた隊士達に囲まれるような形になりました。
誰もが事情を飲み込めない様子で、ただ私達の動きを一つ一つ目で追っている。
原田さんが近藤さんたちを連れて強面のまま到着した時には、彦斎の手にも刀が握られている状態でした。
刀は土方さんが貸したもの。
いくら技や力があっても、それに耐えられる物でないと勝負になりません。
彼なら少しは、私を楽しませてくれそうですから。
いつも一君や永倉さん達と試合をしていても、命までは奪い合えませんから。
魂が震えるとはまさにこのことで、根本にある私の戦いへの欲求が、鼓動を早くする。
ましてやヒマリ君の命を救えることもできるなんて、益々殺る気が出ます。
「双方、構え」
まるでいつもの試合の如く、土方さんが号令をかける。
隊士のヒソヒソした声が止んだ。
「待って下さい!」
息さえ止まっていた空気を破るヒマリ君の声。
ええ、貴女が止めることは容易に想像がついていました。
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