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解放されたヒマリ君は、逃げ出したりせずに律儀に私達の決闘の場にいる。
この隙に隠れるなり、身を守るべく帯刀するなりすれば良いのに、どこまで真面目な人なんでしょうね。
逃げ出さなくとも済むと、それだけ私のことを信じてくれているのなら嬉しいですが…。
きっと貴女のことです、見届けなければならないと、また自らに責を課しているのでしょう。
発言を許すように、土方さんは小さく息を吐いていた。
「勝負なら私がします。
いえ、させて下さい」
「いやですよ」
にっこり、なるべく優しく断る。
それでも食いついて来そうな彼女に、一層なるべく優しく断ることにしましょう。
「ヒマリ君に新撰組の命運を託しても、彦斎の前には容易く打ち砕かれます。
非力なあなたに、この役を譲るわけありません」
私の発言にヒマリ君は口を紡ぐ。
原田さんは「言い過ぎじゃないか」とヒマリ君を庇うようなことを口走ったようですが、それは事情を知るものなら皆分かること。
彦斎が勝てば新撰組を壊滅させると言うようなものを、彼女の気持ちを重視するべきではない。
それはきっとヒマリ君も分かっている。
分かっていても心が伴わないことは、伝わっています。
「総司の言う通りだ。
ヒマリ、悔しかったら上を目指せ」
真摯に私達を見据えるヒマリ君の肩を、土方さんが押さえるように掴んだ。
普段ヒマリ君に甘めの土方さんにしては、厳しい態度。
それでもヒマリ君は首を横に振った。
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