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背が低いことや、力よりも技を重視した動き。
まるでヒマリ君と闘っているみたいに思えます。
しかし、ヒマリ君のようにそう易々と隙を作ってくれませんね。
ならば、こちらから作るとしますか。
ヒュッと空気を裂くような彦斎の刀の軌道を左耳で聞きながら、彼の間合いに入り込む。
近距離に移行すべく身をねじった彼に、空かさず首を狙うように刀を振る。
避けるべく弓なりになった一瞬を逃さず、手首を返して彼の右脇を斬った。
手応えは軽いものだったにしろ、薄い灰色の着物からは赤い血が滲みだしている。
庇うようにかすかに姿勢が崩れる、右利きだからこそ、右脇を狙いました。
「少なくとも」
彦斎が皮肉混じりにニッと笑う。
滲んだ血を見てから、私へと刀を向けた。
「あんたと斎藤は、俺と同じ匂いがする。
人殺しのな」
彦斎が視界から消えた…。
なんてはずもなく、見事な脚力で弾丸の如く一直線に向かって来た。
繰り広げられる刀の乱舞。
弾き、反撃、受けて流し、こちらも攻めて。
時折切っ先が掠り、互いに顔や腕に赤い線を残す。
久しぶりに本格的に刀を砥に出さなければならなさそうです。
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