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余裕があるように考えていますが、今の私は真剣ですよ。
自分の歩調を保っていなければ、彼の死神に道連れにされそうなんです。
だから至って普通に、本気を少し出さなければ。
彦斎の左上腕に刀が入れば、後ろに跳ぶように彦斎が離れた。
息を乱してはいないものの、彼の吐く息は短い。
それに反して、周りの隊士達は息を殺しているように静かです。
ヒマリ君が気になり目線を移せば、真っ直ぐに視線を返してくれる。
受け入れます、だけど諦めていません。
矛盾した感情が読み取れて、フッと笑ってしまいました。
「私や一君が貴方と同じ匂いと言いましたね?」
「ああ、そうだろ。
新撰組が無法者の集まりなのは分かっていたが、あんた達はそれを利用しているだけの、人殺しさ」
「自分の正義、とおっしゃっていたようですね」
彦斎の見下したような顔が、そのまま止まった。
「貴方は、正義なんて言葉を用いながら、自分は人殺しだと認めている。
おや、これはどうしたことでしょう」
不敵な笑みを浮かべて、優しく諭すように語りかける。
「目撃者を残さないのに、貴方が殺ったという微妙な証拠は残す。
最初は貴方が自分の存在を我々に誇示したいのだと思っていました」
だけど、違うんですよね。
刀を交えて分かりました。
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