2966人が本棚に入れています
本棚に追加
▽▽▽
馬に乗るのは久しぶりだったが、栗毛の牝馬との息が合っていたのか、ごねられること無く走らせることができた。
目的地である屋敷に着いた時も、屋敷の主はまるでこうなると予想していたかのように、揉めることなく彼の妹に同行を願うことができた。
再び帰路を馬を走らせ、俺の背中にしがみつく女は、緊張から筋肉がこわばっている。
彦斎が人質を取り逃亡を謀ろうとしていることを伝えた時は、気丈にふるまっていたが…。
動揺を隠しきれない震えを誤魔化すように、俺の鳩尾の辺りで固く組まれた両手。
あまり締め付けるな、とも言えずに馬を走らせる。
屯所の正門が視界に入れば、門番の隊士も除き込むように中を見ていた。
間に合ったか。
「おおぉぉぉ!!」
彦斎は死ぬだろう。
そして、全てが闇に葬られるだろう。
.
最初のコメントを投稿しよう!