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  そんな顔をされたって困る。私だって好きでこんな事を言っている訳じゃないんだ。誰もが困らないような事を言えたなら、それはなんて立派な事だろう。 だけど今の私にはやりたい事も目指すものも分からないから。 「山岡先生」 「うん?」 「私はどうするべきですか?」 「それは親御さんと話し合え。進学するなら金を出すのは保護者なんだからな」 「…はい」 なんだか違う。欲しかった言葉を先生、否。山岡さんはくれなかった。親やお金の事。確かに重要な事だけれど、どうも胸につかえるものがある。 だけど「そんな事を言って欲しい訳じゃないんです」なんて言える筈もなくて、私は部屋を出た。 失礼しました、の声がやけに重たい。 「吉川さん大変だね」 「あ、香奈ちゃん。…部活?」 振り向いたところで掛かった声に顔を上げれば、同じクラスの矢井田香奈ちゃんがいた。 香奈ちゃんとは仲が良いわけでも悪いわけでもない。時々、挨拶を交わす。その程度だった。 前に友だちが彼女を嫌いだと言っていた覚えがある。確かに一癖ある子だ。 香奈ちゃんは私の問いに「そうだよ」なんて笑ってみせた。 「吉川さん進学すんの?」 「え、いや…まだ分かんない」 「早く決めなきゃ不味いよ」 何ともなしに言う香奈ちゃん。そんな事は分かっているのだ。私自身、少し焦っている。
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