幸せだった頃

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「こうして一緒に帰り始めて随分とたつねぇ。 岡崎君と初めて会ったときは、こんな風になるなんて考えてもなかったよ。」 瀬倉が笑って伸びをしながら言ってきた。 「そうだな。」 俺は少し俯いて答えた。 俺は、今住んでいる町には中学の時引っ越してきた。 理由は簡単。 俺はあの事件のあと、人と関われなくなったからだ。 いつか周りの人も俺を裏切るかもしれない。 そんな風に感じるようになってしまった。 友人が励ましてくれても、それさえも嫌になり、突き放した。 心配した親戚が俺を転校させた。 その転校先が、今、俺が通っている中学である。 そして、俺は今住んでいる町にやってきたのだ。 この学校は必ず部活に入らなければならないため、選んだ部活が吹奏楽だった。 瀬倉とはここで初めて会った。 楽器は、余っていたパートがチューバしかなかったので、そこに入った。 そのため、初めは楽器のことで精一杯だった。 それでも周りの人と頑張って接してみた。けれど、やはり裏切るかもしれないという気持ちは消えなかった。 そして、数ヶ月後。俺が変わるきっかけをくれた事が起きた。 「オーイ、岡崎くーん?」
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