7.悪夢の始まり

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息が上手く出来ない。 身体がすくむ。 全身が震える。 「家を出たのはお前にあれ以上傷を増やさないため。……いや、それもお前に向けた愛情じゃないか。」 そう言って自嘲気味に笑ったお父さんの顔からもう家族に戻れないことを悟った。 「じゃあ、これで。もう会うこともないと思うがな。」 『…待って』 まだ肝心な事を聞いてない。 『なんで私は記憶がないの?あの日って何?……全部、教えてよ。』 「……自分で思い出せ。」 『なんで……』 「自分で思い出して……絶望しろ。」 そう言い残してお父さんは去って行った。 『……っ…はぁ、はぁ』 全身の力が抜けて私は地面に座り込んだ。 「おい!大丈夫か?」 『…っ…大丈夫』 「いまの本当に父親か?そうは見えなかったけど。」 『うん……一応ね。』 「………」 黒川君は詮索してこないから助かる。 『ごめん。待たせて。みんな待ってるから行こう黒川君』 「秋人」 『?』 「黒川君じゃなくて秋人って呼んで。」 『え、でも…』 「いいから」 『わ、わかった』 「うん。あと笑わなくていいから。」 『え…』 「俺の前では無理して笑わなくていい。見てるこっちがつらいから。」 『……はい』 「ん。じゃ、行こ」 秋人は優しく笑うと私の頭をポンポンとたたいた。 私、なんで秋人と一番仲良いのかわかった。 秋人って千景に似てるんだ。 さりげない優しさとか、一緒にいると安心するとことか。 でも秋人にはドキドキしたりしない。どっちかって言うとお兄ちゃんみたいな感じ。 ………千景に会いたいな
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