8.消えない傷痕

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目を開けるとまず天井が見え、次に千景の顔が視界に入ってきた。 「大丈夫か?」 『…っはぁ、はぁ……ゆっ、め?』 ここで初めて私の呼吸が荒い事に気付いた。 「お前、随分うなされてたぞ。」 『だ、大丈夫…いつもの夢だし…覚えてない』 嘘。本当は少し覚えてる。本当に少しだけど。 私は自分の手が震えてることに気付き、咄嗟に体の後ろに隠した。 当然千景がそれを見落とすわけもなく手はあっさりと捕まり前に出された。 「全然大丈夫じゃねぇだろ。手、震えてんぞ。」 私はひたすら大丈夫だと言った。 「今日学校休むか?」 『何言ってんの。本当に大丈夫!少し怖い夢見ただけだから。』 千景は納得していないようだったがしぶしぶいつも通り学校まで送ってくれた。 教室に行くと皆はもう来ていた。 「あ!椿おはよー」 「椿ちゃんおはよ!」 「…はよ」 『おはよう』 「椿…顔、色悪く、ない?」 結菜が私の顔を見ながら言った。 「たしかに…昨日貧血だって言ってたけど大丈夫?」 『大丈夫。ちょっと夢見が悪かっただけだから。』 そう言って私は席に着いた。 その日は何も起こらずに終わった。
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