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秋人が見たのは海水に濡れて透けた制服の下から見えた無数の傷痕だった。
私にこの傷をつけたのはお父さん。
お母さんが死んでしばらくしてから毎日お酒を飲むようになって仕事も行かなくなった。
それでもまだマシなほう。
『お父さん、もうお金ないよ。ねぇ……そろそろ仕事……』
「お前には関係ないだろう」
『でも…』
「黙れ!」
お金がなくてお酒が買えなくなるとお父さんは私を殴ったりするようになった。
それでも私は家にいた。バイト先に泊まることも出来たけどお父さんを家に一人にできなかった。
たった一人の家族だから。
お母さんが死んじゃって心が不安定なだけなんだと、きっと落ち着いて仕事もしてくれると信じていた。
でも
『ただいま。………お父さん?』
ある日バイトが終わって家に帰るとお父さんの姿はなかった。
借金の借用書だけを置いて出て行ってしまった。
『嘘でしょ……なんで…』
そこからは地獄だった。
取り立て屋に追いかけられる毎日。
私は学校に行くのを辞めて毎日バイトをした。
もう私には何も残ってないと思ってた。
みんなに…
千景に会うまでは。
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