8.消えない傷痕

9/14

5497人が本棚に入れています
本棚に追加
/169ページ
『…………その時の傷痕がこれなの。』 秋人は黙って私の話を聞いていた。 小さく「そっか」と言って立ち上がた。 『……驚かないの?』 「いや、驚いた。正直ビビったし。でも変に気を遣われるのとか同情されるの嫌だろ。」 『うん』 「やっぱりな。お前俺と似てるとこあるから。」 秋人はそう言って笑った。 「………その傷のこと、千景さん知ってんだろ?」 『……ううん』 「は?なんで」 『言ってないから』 「言ってないって……一緒に暮らしてしかも結婚してんのに見られないわけ?てかあんたらヤってないの?」 『やるって……何を?』 「わかるだろ」 『わかんないから聞いてる。』 「はぁ……マジかよ。………夫婦の営み」 夫婦、の……いとな、み? 『!!』 その瞬間、私の顔に体中の熱が一気に集まった。 『し、してないよ!』 「マジで?生殺し状態かよ………ま、そんなことどうでもいいんだけどさ、ずっと隠し続けるのか?」 『っ……そ、ゆー訳じゃないけど………言えない。』」 「なんで」 『言えないものは言えない。』 言える訳ない。言ったらきっと千景は……… 「……なぁ、お前って本当に千景さんと………」 そのまま秋人は黙ってしまった。 『何?』 「いや、なんでもない。帰るか。そろそろあいつら騒ぎ出しそうだし。」 『うん。あ、今日はありがとう。さすが私の1番の男友達!』 「友達……」 「あのさ、ここに連れてきたの、お前が初めてだから。……お前だけだから。」 『え?なんか言った?あ、電車くるよ!』 「……お前、最悪。」 『はぁ?なんで』 「なんでもねーよ!」 ……?変なの。  
/169ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5497人が本棚に入れています
本棚に追加