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それからチカ君はぽつりぽつりと話し出した。
「お前さ、中学の頃俺が大切な人がいるって言ってたの覚えてるか?」
「ああ!覚えてる!」
「そいつ俺の親が離婚してじーさんとばーさんちに預けられてる時、隣に住んでた六つ年下のガキでさ。俺そいつにスゲー心救われたんだよ。で、本気で好きだった。いや……好きなんだよ。」
「うん」
「で、じーさん死んで母親が俺を引き取りに来た時に絶対迎えに来るって約束したんだよ。我ながらすっげー子供じみた約束だとは思うがな。でも俺はその約束を忘れた事はねぇし破るつもりもない。」
「……うん」
「で、こないだやっと見つけてさ。様子が変だったから少し調べてみたんだよ。」
「変?」
「ああ、冷めたっつうか……目に光りがない感じ。」
「で、なんかわかったの?」
「そしたら、そいつの親父が借金してたみたいで学校にも行かずに年齢偽ってバイト三昧だったんだよ。」
「うわ……」
「そうなったのは傍を離れた俺のせいだ。」
「いや、それはしかたなくない?」
「でも、もっと早く迎えに行けばあんなことにならなかったかもしれないんだ。」
「…………」
「……俺が前バイトしてた時に俺のこと可愛がってくれたおやじさんがいてさ、その人なかなかでかい会社やってんだけど高校卒業してもし俺に会社で使える実力があれば俺の事つかってくれるって言ってくれてんだよ。」
「で、頑張ってお金貯めて借金返してあげたいってこと?」
「……それもあるが、そういうの全部ひっくるめて迎えに行って幸せにしてやりたいんだ。俺が傍にいてやれなかった分も。」
それがチカ君の話……覚悟だった。
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