15年前の愛の幸せと苦悩

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自分が25歳になる冬。 気持ちに少し嘘をつきながら、彼女に逢いに行く。 結婚を意識して付き合っていた頃もあった。 世間知らずの自分に苛立ちを覚えながら、一生懸命に父親を演じる。 仕事も忙しくなり、彼女との時間も減った。 いや、 好きと言う気持ちに葛藤しながら、ただ仕事に打ち込んでいただけなのかも知れない。 ある日、彼女の自宅に電話をした。 子供が電話口に出る。 『お母さんいる?』 最近、夜は時々出かけてるとのこと。 そんな事が2週間位続いた。 不思議に思い、紹介してくれた先輩に相談してみると紹介した関連会社の男と逢っているらしい。 先輩は知っていた。 俺よりもっと。 彼女がその男に相談を持ちかけ、経済的に援助を受け肉体関係にあることも。 思わず殴りそうになった。 でも、殴らなかった。 嫉妬とプライドが頭の中で交差する。 反面、それで彼女が幸せになれるのなら、それはそれでいいのかも知れない。 俺は知らないフリをした。 その方が楽だったのかも知れない。 今は強くそれを実感する。 携帯に彼女の子供から電話がくる。 『スキー場行こう、ソリで引っ張って』 長男の子と二人で遊びに行った。 自然に子供達への愛情が沸いてきていた。 この子達とは、もう遊ぶ事も話す事も出来なくなってしまう。 同時に子供達に対する寂しさも自分の心の中に芽生えていた。
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