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「…あんた、何者…」
かろうじて出せた声は掠れていて絞り出したような声だった。男は自分に歩み寄りながら、笑顔のまま自分に銃を向けた。
「君の敵、そして…この先、邪魔になるであろう君を封印し閉じ込める者だよ―」
「封印て、俺はただの人間だぞ…」
やっと話せた頃には間合いを詰められていた。――けれど、焦りと言う感情は何故か持てなかった。さっきまではあった筈の、感情が消えていく。
「いいや、君は人間じゃない」
男は笑う。
銃のセフティーを外す。
それから、自分に銃を向けた。
その時、やっと自分は動けて投げナイフを指に挟んだ。
男は一瞬びっくりしてたけど、また笑った。
「驚いたよ…まさか僕の前で動ける人がいるなんて」
「人間じゃない、てどういう意味だ…」
「兵器、道具…だろ?しかも、ただのそれじゃない」
ただのそれじゃない?意味がわからない。けれど、男は笑ったまま唇を舐めて自分を見下ろす。
「君は闘いに依存しているんだ」
その言葉を聞きながら、俺は銃が発砲された時に聞こえる乾いた音を聞いた。
そのあと、頭が痛んで身体が傾いて――
目を閉じる前、男が満足そうに笑っていたような気がする。
それから先は、覚えてない。
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