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「おやじ。確か私の15の誕生日に買ってくれたよね。ほら、大物釣り上げた時にさ。」
そういうと女性、ナミは奥へと消え、自分の部屋の中を探し回ったのだろうか、しばらくすると埃を掃いながら小さな手鏡を持ってきた。
「どうぞアキ君。」
君と呼ばれたのはいつ以来だろうかと、無意識にない記憶を心の隅で懐かしみながら、ナミから手渡された手鏡、しかしそれを見て秋は声も出なかった。
「顔が・・・自分?」
どう見ても見知らぬ顔。見知らぬ体、ゲーテの言う15・6歳位の、青い顔をした少年が鏡に映っていたのだ。
「そんな馬鹿な・・・」
様々な情報、ショックなどが次々と押し寄せ、再び瞼が重くなってくる。
秋は木製の天井の風景を最後に、そのまま秋は潮の臭いのする布団に倒れこんだ。
意識を失う最中、ナミの声が遠く遠く近く、秋の脳内に波のような音が静かに響いた。
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