火の国から水の都へ

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火の国から水の都へ

月に数回だけ 俺は町のほうへ降りる 牛と羊のミルクとチーズ、鶏の卵を売りに出るのだ 家で飼っているアースのユーリが荷台を引いてくれる 『坊や!こっちにもミルクとチーズお願いね』 「はーい」 いつもの太ったおばさんだ 『偉いわね』 「そんなことないです」 少し照れ臭い いきなり大きな鳴き声が町に響く 〔ガアアア!〕 アースの声だ 軍人… 軍もアースやエアを利用している 鉄の鎧を纏い 手綱と鞭をもち 剣や拳銃をもつ人間に言うことを聞かされている かわいそうに… 『また戦争よ いやね』 おばさんが悲しげにいう おばさんの旦那さんは戦争の時に無理矢理連れていかれ亡くなったと聞いたことがある おばさんには悪いけど、同情は出来ない 人間同士の戦争にドラゴンを巻き込んでいることが俺には許せない ピーッ 笛のような音がした後 一頭のアースが暴れだし全アースがつられて暴れる それはユーリも同じで暴れだす 「ユーリ!落ち着け! 落ち着くんだ」 ユーリは聞こうとせず他のアースが逃げていく方向へと走り出した いくら名を呼んでも反応しない ユーリを追いかけていると 草木が広がる広い空間に出た 「ユー…」 息を飲んだ だってドラゴンが輪になって伏せているその中心にピンクシルバーの長い髪をした変な服を着た少女がいるのだ 少女はドラゴン達の鼻を撫でてニコニコと笑う ドラゴンが優しくなく 〔クォー〕 ありえない あの少女はドラゴンと対話している ドラゴンの言葉が分かるなんてありえない 「君は鎧を纏っていないわね」 〔グルル〕 「ユーリはテイトのドラゴンか アハハ」 少女はそういいユーリの鬣をわしゃわしゃとなでた 「テイトはどこにいるの?」 〔グアアア!〕 「テイトってそこにいる子?」 少女がこちらを向かずにユーリと戯れながら俺に話しかけた そのせいか驚き肩がピクッとあがる 「あっはい!」 「ユーリが大好きだって」 「えっ?」 「君はドラゴンと話せないから通訳してるの」 少女はニッコリ振り返った 太陽の光を帯びてキラキラとピンクシルバーの髪が光る
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