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晴れた空。
頭の上、天を仰ぎ目を向けると、そこには雲ひとつ無い快晴の空が広がっている。
南中高度を目指し上って行く太陽から降り注ぐ穏やかな光は、この春らしい麗らかな空気を作っていた。
時刻は既に午前九時を回ろうとしている。
今日は春休み前最後の休日、日曜日である為に授業は行われないのだが、運動部や文化部などといった部活動が行われる生徒達は、既に八時過ぎにはそれぞれの教室やグラウンド、体育館などに集まり準備やストレッチなどを行っていた。
そんな中、悠長に校門までの道を歩いてくる凸凹(デコボコ)二つの影があった。
きちんと右側通行を心掛け、車道側を歩いて来るのはブレザーを着た女生徒。
左腕に黄色のラインが上下に入ったオレンジ色の腕章。
その中央には黒い文字で『生徒会長』と刺繍がされている。
身長は160cmに届きそうで届かないくらい、太陽に照らされて茶色く見える頭髪は後ろで一つに結ばれている。俗に言うポニーテールというやつだ。
眠そうに欠伸をしながら歩く彼女は、この霞学園の生徒会長である『牧之瀬歩(マキノセアユム)』。
そして彼女の隣、歩道側を歩いて来るのは、身長172cm、割と引き締まった身体、男子としてはやや長めの黒髪を風に揺らす霞学園生徒会副会長。『剣真琴(ツルギマコト)』。
彼は右手に握られているオレンジの腕章に目をやり、一呼吸置いて、隣を歩いている歩に視線を移す。そして、
「これ、付けなきゃいけない?」
そう優しく声を掛ける真琴。
しかし、そんな彼に対して車道側を大股でのっしのっしと足を進める歩は、立ち止まりキッと睨みを一つ返し、
「せっかく桜ちゃん騙して作らせたんだから、付けろよー!」
綺麗な顔立ちからは、全く想像出来ないであろう言葉遣いが飛び出した。
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