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「えぇぇ……。」
真琴は溜め息の入り混じった嫌そうな返事を口から零す。そして、自分の右腕にその腕章を軽く当てながら、先程と同じトーンで呟く。
「こんなの校内で付けるとさ、なんだか生徒会の権力振りかざしてるみたいで、すっごく嫌なんだよねぇ。」
しかし、再び足を進める歩からの返事は無い。だから、彼は思いついたように、
「円(マドカ)ちゃんにも腕章渡すんだよね?彼女も会計っていう生徒会の立派な役職なわけだし。」
「……鞄中に入ってる。」
歩は背中に背負っている、本来は手持ちの筈の学校指定鞄を親指で差した。
「じゃあ、円ちゃんが付けるって言ったら僕も付けるよ。それでいい?」
「別に良いけど。」
歩は少々納得がいかないみたいだが、歩幅とペースは変わらないまま歩き続けている。
そんな会話をしながら二人は校門を抜け、学校の敷地内へと足を進めていく。
校門から昇降口までの間は約500m。その間にはテニスコートや剣道場、柔道場など様々な部活の活動場所を通り過ぎなければならない。
まず、見えてきたのはテニスコート。
男女別れてストレッチを行っているテニス部員から朝の挨拶が飛んでくる。
『会長、副会長、おはようございます!』
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