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「いや、別にミスって感じでは無いんですけど。」
そう言葉を返すと、頭の中に今日の出来事がフラッシュバックしてくる。
歩への告白を聞いてしまうきっかけになったのは、文化祭のしおりのページに抜けがある事を知らされたからであり、それを解決しようと歩を探していた所、あんな事に遭遇してしまった訳で。
自分のミスでは無い。自分のミスでは無いが、なぜか申し訳ない気持ちになってしまう。
「あの、実は……。」
神妙な面持ちの銀を不思議に思ったのか、円は作業の手を止め、視線を彼へと向ける。
「ちょっと、悩み事というか相談があるんですけど。」
「何?」
「ついさっきの事なんですけど、牧之瀬さんが女の子に告白されてるのをたまたま聞いちゃいまして。それで、何て言うんですかね、こうなんかモヤモヤしちゃって困ってるんですけど、どうしたら良いんでしょう?」
真琴の魂胆には乗せられないように少しだけアレンジを加えて伝えてみたが、円は一切動かない。聞いた途端に固まってしまったようで、フリーズしている。
だから、銀は焦って、
「ま、まあ、別に当事者じゃない自分がどうしようがあんまり関係ないって言うか、牧之瀬さんの事なんで悩むだけ無駄というか、蚊帳の外なんですけど。」
付け加えるが、彼女の耳には全く届いていない。
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