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銀の話を聞く状態で止まってしまった円につられ、銀自身も派手に動く事が出来なくなった室内は、さながらファンタジー世界のように、この空間だけ時が止まってしまっているかのようだった。
だが、そんなおとぎ話は小説の中だけの話であり、確実に時は進んでいる。
窓の外からはトンカチなどの工具を使う音が聞こえてきているし、買い出しへと向かう生徒たちの楽しげな会話も聞こえている。
「あの、三菱さん?」
恐る恐る口を開く。
返事が来ないと思っていたが、いたって彼女自身は冷静だったのだろうか? 意外とすぐに言葉が返って来た。
「……はい?」
「だ、大丈夫ですか?」
「何がですか?
文化祭の準備で忙しいこの時期にそんなどうでも良い事で悩んでる時間なんて一秒もありませんよ? すぐに忘れましょう!
はい、仕事して下さい。仕事!」
「あ、はい。そうですよね。自分、ちょっと出て来ます!」
その場から逃げ去るようにして銀は生徒会室から出て行った。
残された室内からは、作業をする円の物音だけが響いている。
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