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歩は持っていたしおりを隣にあった机へと置く。
そして、盛り上がりを見せるリハーサルへと目を向けながら、
「そういえば、あれはどうなったの? 一寸法師と親指姫と輝夜姫の最初のシーン。」
二人へと尋ねた。
それは台本が出来上がり、クラス全員に配布された時に目を通したある男子生徒から発せられた問題。
小さいサイズの役をそのまま演じてしまって良いのか? という話だった。
「牧之瀬さん、輝夜姫じゃなくて闇夜姫です。」
岡田が真面目な顔で返事をする。
「あ、そうだった! それも本当に採用されちゃうんだもんね。」
岡田の隣にいる闇夜姫役を演じる彼女の方へと視線を向け笑いながら答える。しかし、返事は彼女からではなく、再び岡田からやって来た。
「元々輝夜姫の役がダークな感じだったからね?
男子も面白がって採用してくれたよね?」
三宅は一度頷くと、
「うちのクラスの演劇は全てが緩いから。
親指姫と一寸法師は、そのままのサイズの話にしちゃったし、いつの間にか鶴も名古屋コーチンになってるし。設定も名前も後から適当に変更しても大丈夫とか。緩い。」
鼻で笑う音が聞こえる。
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