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剣道場、柔道場と二つの建物を過ぎると、歩が思い出したようにフフッと笑いを零し、
「筋肉バカ共は単純で良いな。
俺に良い所を見せようと、次の大会も素晴らしい成績を収めるに違いない。
生徒会の評判も鯉のぼりだな?」
そのまましばらく黒い笑みが止まらない歩に対して、隣で一部始終を見ていた真琴が言葉を返す。
「……うなぎだからね?
っていうか、学校のど真ん中でそういう事を堂々と言わないで貰える?」
「安心しろ真琴。俺はあいつらにとって天使らしいからな。これくらいダークな事を言っても『堕天使だ!』とか言って許されるんだよ。多分。」
「多分って……。ちょっと、一人称出ちゃってるよ?」
「今日は生徒会の仕事だけなんだから関係ねぇよ!」
そう言うと、歩は目の前30mほどに迫っていた昇降口目掛けて、小走りをして校舎の中へと入って行く。
真琴は肩を落としながら溜め息を吐く。
そして、小さくなる歩の背中を見ながら、
「……これから大丈夫かなぁ?」
と、同時。彼の右手側の東校舎三階の窓が開き声がした。
『真琴様ぁー!』
そこには数名の女子生徒の姿があり、真琴はその教室が音楽室である事を思い出す。
吹奏楽部の子達かな?
「おはようございますっ!」
軽く手を挙げ微笑む。
返事を返すと、「キャー!」という悲鳴にも似た絶叫が上がる。
それを見て真琴は、他意は無いが、自分も歩とやってる事は変わらないな。そう思い、苦笑いを落とした。
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