prolog

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貴方と初めて出会ったのは、貴方の母君が病気で他界した葬式でのことだった。 奥方様の葬式に、代々華南(カナミ)に仕える家系として忠義を誓っている藤川が呼ばれないはずはなく、父に連れられ訪れた大きな会場。 その中心には花で綺麗に彩られた、まるで人形のように美しい奥方様が眠っていて、その隣で貴方は凛と立って、焼香を上げにきた大人たちに謝辞を述べていた。 そこに、父と共に近づく。 「来てくれたのか…、ありがとう」 「何を言ってる。私が来ないはずがないでしょう」 父に向かって、泣きそうな、くしゃくしゃした顔で声を掛けたのは、父が仕えている華南の当主様。 そしてその息子である貴方は、父の手に繋がれた俺を見て少しだけ目を見張り、そして凛としていた表情を少しだけ嬉しそうに綻ばせ、俺に手を差し出した。 「藤川の嫡男だね。…僕は華南綾(カナミアヤ)という。僕の父と君の父のように、僕らは生涯共にいる関係となるだろう。よろしく頼む」 差し出された手を取る。 するとその冷たさに俺はすごく驚いて。しかし華南の表情にはなんの変化もなくて。 子ども心に、嗚呼、彼は泣きたくても泣けないのだと悟った。 そして、彼を護るのが自分の役目であり使命なのだと。 まだ主従の意味すらも理解できないような頭で、薄ぼんやりと、貴方との未来を自覚し始めたのだ。
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