プロローグ、<到着>

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 彼はこんな所にある学校なのだから、てっきりプレハブ小屋だか、半壊した洋館のような所だとおもっていた。  まったくもって失礼な想像だが、まず学校がある場所からしておかしいのだ。そんな風に思われても仕方ない。  しかし、たった今全体が露わになった校舎はそんな青年の予想を裏切るものであった。  目の前にあったのは、トタンで出来たプレハブ小屋でもなく、ましてや今にも幽霊が出てきそうな廃墟のような建物ではなく、 風格すら漂ってきそうな堂々とした校門と都心の名門校と比べても遜色なさそうな、むしろ勝っていそうな大きく立派な校舎があった。  外観としてはある意味この場所に相応しく、下界の無駄を遮断したかのような質素だが荘厳な雰囲気漂う、正に「学び舎」といった感じだった。  その学校の名は<竜月高校>。    それが良い意味でも悪い意味でも青年ことカケルの予想を裏切ってきた、彼がこれから通うこととなる高校の名前だった。  ――そして同時に、後の彼の人生を大きく変えるきっかけとなる名前でもあった。 しかし、それをまだ誰も知らない。知っているとすれば、どこに居るのかも知れない神ぐらいである。 そう、正に神のみぞ知るところである――
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