<闇を狩る者達>

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 箱の中に同封されていた手紙にさっと目を通したカケルが言う。  すると、一目覗いただけて椅子にもたれかかったムーナが、クク、と僅かに笑う。 「かふすぼたん、というのはよく分からぬが、正真正銘のドラゴンが居る前にドラゴンの小物とは、お主の祖父は洒落が効いておるではないか?」 「いや、それは流石に予想していないでしょ……」  そんなムーナの発言を聞き、カケルはふと思う。 ムーナやフィアといたドラゴンのまなこに、“伝承のドラゴン”というのは一体どう映るのだろうかと。  在りし日の真実なのか、はたまた人が作り出した虚構なのか。  実際にあったことなら物語に残る悪いドラゴンの多いこと、と思いたくなるが、単に文字通り“悪”目立ちしているだけなのかもしれない。 「う~ん……。あの、カケル? 一つ手に取ってもいいでしょうか?」  フィアは小物が好きなのか、しばらく眺めた後、どこか神妙な面持ちでそうカケルに尋ねてくる。 「え? あぁ。二つあるし、全く構わないよ」 「ありがとうございますわ。では……」  それを快く承諾すると、フィアはそっと一つ手に取り、愛でるというよりは、値踏みするかのように顔に近づけひたすら金属のドラゴンと睨み合う。
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