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「いや、二つあるし、見た目も全く同じだからさ。せっかくなら喜んでくれる人に使ってもらった方がいいだろ?」
事実、袖口に留めるという事が手紙に書いてなければ、カケル自身全くピンと来ない代物であったのは確かだった。
「その……そう言ってもらえるのは嬉しいのですが……。えと、本当にいいんですの?」
「貰えるものは貰えばいいではないか」
「え……」
ためらうフィアの背中を押したのはムーナだった。
「一つきりではないのだからそう深刻に考える事は無いと思うぞ?
そのドラゴンの小物がどこの土産物かは知らぬが、な」
そう言ってちらりとカケルの方を見る。
「せっかくなら喜びは分かち合いたいしね。えっと…………。
“ウェールズ”って国らしいね。その国の守り神の赤い竜だって」
ムーナの言葉に相槌を打ちつつ、何となく暗にどこのものか教えろと言われた気がしたカケルは再度手紙を手に取り、キーになりそうな部分を抜き出す。
「ウェールズ、ですか……」
フィアは呟き、銀色に鈍く光るドラゴンのカフスボタンに目を落とす。
「せ、せっかくですしね! カケル。ありがたく頂きますわ! フフッ、ありがとうございます。おじい様にも、お会いする機会があったらお礼を言わなければなりませんわね」
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