<闇を狩る者達>

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 ようやく受け取ることに決めたらしいフィアがにこりと微笑み、カケルに礼を言う。カケルの祖父にも礼を言わなければと、両の拳を握り締め今から意気込む姿は健気で微笑ましい。 「そうそう、それでいいんだよ。大事にしてくれればさ」 「そうですわよ……ね……? ――あ」  一安心し伸びをしていたカケルは何かを思い出したかのように固まったフィアに首を傾げる。  するとフィアは悲しげな顔で無言で自分の手首のあたりをドラゴンのカフスボタンで撫でるような仕草を繰り返す。  カケルは最初、どういうことか意味を測りかねていたが、それの用途を思い出し、あぁ、とため息を付く。 「その服、そういえば袖が無かったね……」  そう、フィアの服は肩や背中が露出している服で、その上にケープを羽織っている。スーツやコートならともかく、彼女の服には付ける所がなかったのだ。 「仕方ありませんわ。ポケットにしまっておきましょう。せっかくですもの。肌身離さず持っていますわ」  残念そうにしながらも見える所に付けるのは諦めたフィアは、両手で大事そうに握り締めた後、スカートのポケットにそれをそっとしまいこむ。
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