<闇を狩る者達>

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 ベンチの背に寄りかかり、空を見上げて呟いたカケル。そんな彼を見たフィアはムーナに非難するような目を向け、なんとかしろ、とばかりにムーナとカケルを交互に指差す。  喧しい蝉の鳴き声とフィアの無言の圧力を受け、嫌々ながら組んだ腕を解きムーナが二人に近寄った時、カケルがむくりと首をもたげ、視線を空からムーナに移す。 「――そういえば、俺も確かドラゴンの力が少し入ってるんだよね?」 「なんだ、薮から棒に」 「いやさ、俺もそんな風に暑さを感じない、とかなるのかなって思ったんだ」  頭に疑問符が浮かびそうな顔で首を傾げるフィアを尻目に、カケルの問いにムーナはすぐには答えなかった。眠るかのようにゆっくりと瞳を閉じてしばし黙り込み、そして、しばらくののちに「そうだな」と、小さく答える。 「ある程度コントロールする事は不可能ではないと思うぞ。わたしたちとて、ドラゴンの力を完全に抑え込めば人並みに暑いものは暑く感じる。当然その逆も然りだ」 「そっか……教えてくれてありがとな」  礼を言ったカケルはまた脱力し、目を閉じる。 「フン。感謝される謂れは無い。それよりも、だ。さっさっと立たぬか。お主もだ、クリスフィアよ」
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