<闇を狩る者達>

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 長期の待ちの態勢に入り始めた二人にムーナはそう言葉を投げかける。これから待つというのに何故そうしなければならないのかよく分からず座っていると、ムーナがフィアの首根っこを掴み強制的に立ち上がらせた。 「きゃっ!?」 「やはり人間の移動手段にドラゴンが合わせるというのが間違いだったのだ。どこか目立たない所へ行き、飛んでいくぞ」  辺りを見回し、ちょうど良さそうな所を探しつつムーナは言う。どうやら二時間も無為に過ごすという事が彼女にとって我慢ならないらしい。ましてや、“それ以外の手段”がある為尚更だ。  カケルは驚き、弾かれたように立ち上がる。 「えええっ!!? 流石に飛ぶところが見られなくとも見つかるよ!?」 「そうそう起こりはせぬ。どうせ空など見上げはしないであろうからな。人間はどこも地面ばかり見ている辛気臭い輩ばかりだ」  カケルの反論にムーナは全く耳を貸さない。それに彼も彼女の言葉に心当たりが無い訳ではないのだ。  希望に胸膨らませ空を仰ぐ様な人間はそういる訳ではない。現実は日々に追われ、不安に駆られ、足早にビルのジャングルを右往左往する者達ばかりだ。テレビで見ている限りはその箱の中のみで起こっている事と割り切れる。がしかし、誰かに指摘された途端、それは急にリアリティを帯びてくる。
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