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「ドラゴンからはそう見えるのか……」
「そういえば、わたくしがうっかり姿を隠すのを忘れて飛んでいた時、こちらを見られたことがあります。ですがそれも一瞬で、もう一度こちらを見上げる事はありませんでしたわね……」
ふと思い出したらしく、若干空を見上げながらフィアは呟く。
「なんか残念だなぁ。空を仰ぐって機会が減ってるのか……?
――って、ちょっと待って! フィア、今なんて言った?」
空を飛行機や鳥以外が飛んでいたというのに、それを気に留め無い程日々に追われている。そんな心の余裕のない人間が多いことに、非日常の真っ只中にいるカケルは虚しさを感じる。
その時、ふとフィアの言葉が引っかかりカケルは彼女の肩に手を乗せる。
「ひゃっ!?
え、えっとですね……こちらを見られたことが……」
「そこじゃなくてその前、うっかり、って所!」
「うっかり姿を隠すのを忘れてわたくしが飛んでいた……ってところでしょうか?」
肩に手を乗せられ、うわずった声を出したフィア。それでもそれ以上取り乱さずにカケルの質問に答える。
「そうそう、そこ! もしかして、透明にでもなれるの?」
「透明ではありませんが、まあ、相当目を凝らさないとまず気づかれない位だと自負しておりますわ」
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