milk-dipper

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会社に戻ると 「おかえり~」 とアリサが迎えた。 「あら?コウスケは?」 「帰ったよ」 「薄情なヤツだなぁ」 「あ、でもドラム叩いてたよ」 「自由人だな」 ユウタは苦笑した。 「スコア見せてね」 アンナはスコアを見ると 「ちょっとやってみようか」 ユウタはアンナが手をつけていないスコアをモモコに渡した。 「私、耳コピ派なんだよね」 「うそ!?」 “耳コピ”とは、音楽を聴いて覚えて演奏をする『耳でコピー』の事である。 バンドをやる人には案外“耳コピ派”が多く、その中にもスコアを確認程度にしか見ない者や、全く読むことが出来ない者も少なくはない。 「スコアはあんまり読めないけど、この曲なら耳コピ出来てるよ」 「そかそか」 ユウタはベースを取り、モモコはギターのベルトを肩に掛けて音を合わせた。 「せーのっ」 モモコのギターの音にユウタのベースの音が重なると、力強さのあるメロディへと変わる。 「ふ~っ」 「やっぱドラムないとやりにくいなぁ」 ユウタが笑いながら言うと 「いや最高」 アンナは笑顔で拍手した。 「あぁ、言い忘れてたけど、ヒロキはトロンボーンな」 「えぇっ!?吹いたことないよ!?」 「音は出るだろ?バンドの構成上、トランペットじゃなくてトロンボーンになるんだ」 「ん~。まぁ、やってみる」 ヒロキは笑顔で頷いた。 「レオカとリオナはどっちかがテナーサックスやってもらうけど」 「う~ん、時間がとれる私がやるかな」 「じゃあレオカで」 「はぁい」 「よしっ!大方決まったし、あとは個人練習。全員練習は週末ってことで」 ユウタが立つと 「解散っ!!」 レオカの声にみんなフロアーを出た。 ユウタは急にお腹が空いたためレストランに入った。 テーブルに案内されてメニューを眺めていると 「ユウタ、何にする?」 「ん~、唐揚げと醤油ラーメンかなぁ…って、何でレオカが!?」 レオカはテーブル向かいに座っていた。 「すいませ~ん、私は海老ピラフで」 「俺はラーメンと唐揚げ」 「かしこまりました」 ユウタは待ち時間に携帯電話を構うと 「こらっ!!人の目の前で携帯いじるとは何事かね?」 とレオカのどうでも良い話に付き合わされ、黙って唐揚げも奪われたのであった。
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