milk-dipper

15/28
前へ
/129ページ
次へ
翌日からはそれぞれ個人練習と、2週間に1度の全体練習を行う。 「ほら~っ!ホーン隊の出だし弱いよ~!?」 「アンちゃんこそ歌詞間違えないでよ!調子狂っちゃうじゃん!!」 「ホーン隊の音の弱さで気が散るんですぅ~」 「おい、ケンカすんなって!!」 ある程度上手くなると、全体で衝突が生まれ始める。 負けず嫌いの多いレンジャーズならではである。 「じゃあ、もっかい!!」 「OK」 衝突がありながらも成長していくのもレンジャーズならではである。 どんなにぶつかっても、みんな目標は同じだからだ。 「はい、休憩~っ!」 リオナの合図でみんなイスに座って飲み物を飲むと 「おい、何でヒロキはサイダーなんだ?」 1人だけ泡を立てた飲み物を飲んでいるヒロキをユウタは指差した。 「だって俺、サイダーが好きだから」 「好きだからって、肺が疲れるだろ」 「いいのいいのっ」 「それにしても最近寒くなったねぇ」 リオナは窓の外を見て言うと 「そりゃ11月だからね」 ヒロキが答えた。 「食欲の秋だねぇ」 「レオカ、いっつも食欲だらけじゃん」 「そんなことないよ」 「いつ食欲ないの?」 「ん~…ごちそうさました時?」 「そりゃそうだろ!」 「それにしてもさ、この7曲はどんな順番でやるの?」 アリサが言うと 「う~ん。5曲やって、2曲をアンコールにしようかと」 ユウタは答えた。 「アンコール?」 「アンコール起きなかったら?」 アンナが首をかしげると 「大丈夫だよ、俺たちの演奏なら必ず起きるよ」 ヒロキは笑顔で言った。 「それでも起きなかったら?」 モモコは不安そうな顔をしたが 「そんな時のためにサクラを用意するんだよ」 「さくら?」 翌日。 「おぅ、ニシバヤシ」 「おうヒロキ」 「クリスマスイブ、ヒマだよな?」 「なんだよ!?…ヒマだけど」 ニシバヤシはムッとした顔をしていた。 「ライブやるから見に来ないか?」 「だれの?」 「俺たちの」 「マジで!?いくいく!!」 「じゃあいつもみたいに騒いでくれたら良いから」 「ん?どういう意味だ!?」 ヒロキは黙って後ろ手に手を振った。 ニシバヤシはユウタとヒロキのクラスメイトであり、バンドのライブが大好きである。 ライブの時に一番ノリノリになるため、客も釣られて騒ぐのでバンドマンの間で“サクラ”と呼ばれている。 勿論、本人は知らないのである。
/129ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加