milk-dipper

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道路から少し外れた大きな施設。 玄関から入り、白い床の廊下を抜けてスロープを上がり下りして、大きな両開きの茶色いドアを開けると大音量の演奏が鳴り響いている。 小さく飛び跳ねて煽るアンナ、それに併せて体を動かしながら演奏するユウタとモモコ。 力強い音を鳴らすリオナとレオカとアリサ。 それらを統率するリズムを刻むコウスケ。 微妙な顔をしているヒロキ。 それらを見届ける客も押し合いや、人の上を飛び交うモッシュ&ダイブで盛り上げる。 「いぇ~い!!」 「どぅもありがとぅ~!!」 鳴り止むことない拍手の中、それぞれ客に手を振りながらステージ袖へ捌けた。 「いえ~い!!」 「レンジャーズ最っ高っ!!」 楽屋に戻ると、テンション高いままみんなでハイタッチしあった。 「いえい!!いえい!!いえ~い!!」 「リオナ、なに歌姫みたいに挨拶してんだよ~」 「似てたじゃな~い」 みんな笑顔の中 「ちょっ!ちょっと待ってよ!!」 ヒロキの声にみんな動きが止まった。 「何だよヒロキ?」 「何だよじゃないよ!!聞きたいこと山盛りなんだけど!?」 「なんだよハンちゃん」 「まずはアンタだ!」 ヒロキはアンナを指差すと 「わたし?」 アンナは自分を指差した。 「最初の曲の時っ!」 「あぁ、BALERAか」 「そういうタイトルなの?知らないけど!何で俺の楽器持っていっちゃうかな!?」 「だって、私ボーカルじゃん。あの曲歌う所無いから手持ちぶさたなんだよ」 「だからって俺の楽器持っていく事ないだろ!?」 「ちゃんと代わりの楽器置いてったじゃない」 「トライアングルをね!!」 次々にステージに向かう中 「アレ?俺の楽器は?」 「はい、楽器」 とアリサがトライアングルを渡した。 「これ…えぇ!?」 ヒロキが言おうとしたものの、みんなステージに出ていて、仕方なくトライアングルを持って出た。 コウスケのカウントに始まった曲は、ヒロキの全く知らない曲だった。 それっぽく鳴らしていると、ユウタの合図に全員の演奏が止まり、ヒロキのソロ演奏が入った。 その後、何事もなく演奏が続いて終わった。 「なんなの!?アレ」 「パフォーマーみたいな」 「ほら、あのイカツイR&Bグループみたいな」 「アレはいっぱいパフォーマーがいるから成り立ってるんだよ!!」 必死なヒロキと裏腹に、みんな冷静な顔をしていた。
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