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24時間前。
ユウタは靴を履き直すと
「行こうか」
コウスケは軽く手で煽って車に乗った。
「いや~、時間掛かったなぁ」
「ヒロキの演技酷すぎっ!」
ユウタは飲み物をコウスケに渡して、ペットボトルのキャップを開けた。
「あ~、ホントなら30分もかかってないだろ」
コウスケは飲み物を一口飲むと、すぐにキャップを閉めた。
「見たことあんのかと!数々の名優たちが刺されるシーンで『いだ~い!いだ~い!』などと叫ぶところを!」
「ははは!」
熱を入れて語るユウタに思わず笑ってしまった。
「それにしても、今日の仕事って運送業だっけ?」
「うん。初めて行く会社だな」
「あぁ。つか、コウスケと2人で依頼なんか久しぶりだな」
「うん」
外を眺めている内に荷物が詰められている大きな倉庫に着いた。
「ここかぁ」
ユウタが先に降りて倉庫に書いてある会社名を確認した。
ユウタたちの姿を見るや、事務所から中年の男の人が出てきて
「あ~、待ってましたよ。早速ですが…」
と片手に持った地図をペンで印をつけて
「この辺りへ、そこの台車に乗ってる荷物を運んでください」
倉庫入り口に置いてあるリアカーを指差した。
「分かりました」
「…一応、ウチの制服も着てもらえますか?着てないとお客さんは不審がりますので」
「はい」
ジャンパーと帽子を受け取って着ると
「それじゃあお願いします」
背中をポンと叩かれ、2人はリアカーを押して歩いた。
「…なんかピリピリしてたな」
少し歩いてからユウタが言うと
「俺たちが遅れたからだろ」
コウスケはチラッと振り返って答えた。
「全部ヒロキのせいだな」
「あぁ」
しばらく押して歩くと、ようやく配達エリアに到着した。
荷物のリストを確認すると
「ユウタ、細かい住所分かる?」
「うん、コレ持ってきたから」
ユウタは電子マップを見せた。
「最初の家は…そこの2件先だ」
ユウタの案内通り移動すると、表札と荷物の宛名が同じ名字の家に着いた。
「ここだ」
「じゃあ須藤くん、持っていってくれ」
コウスケは玄関を指差した。
「お前も持てよ!テレビだぞ!?」
「いやいや、目を離したスキに荷物盗まれるかもしれないだろ!?」
「…はいはい」
ユウタは渋々、重いテレビを抱えたまま家のチャイムを押して荷物を届けた。
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