狩人のマスク

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少しムスッとしながら荷物を順番に届けていると 「こりゃ楽だな」 ボソッと言うコウスケに 「お前はなっ!!」 ユウタは思わず怒鳴った。 「…わかったよ、次は俺が持っていくよ」 「んっ」 一軒家の玄関前までリアカーをユウタは押して、今度はコウスケが持っていった。 何事もなさそうに戻ってきたコウスケに 「よくできました」 と手を叩くと、コウスケは子供扱いされていることに気付いてムッとしていた。 「次はユウタな」 「はいはい」 次に着いたところは7階建のマンションだった。 「げ~っ!」 「ははっ」 ユウタは渋々荷台へ行くと 「しかもデカイ上に5階じゃねぇか!」 「…いってこ~い」 コウスケはニヤッとしながら手を振った。 荷物を抱えて玄関を入り、荷物を一旦置いて中にあるドアの横についているボタンを宛名に書いてある部屋の番号の通り押すと 「…はい」 スピーカーから男性の声がした。 「御荷物お持ちしました」 「はい、どうぞ」 中のドアが開いて、荷物を持ち直して入った。 中にはエレベーターがあったため、階段の昇り降りが無いことに少しホッとした。 部屋の前まで行ってインターホンを押すと、若い男の人が出てきた。 「はい」 「あ、お届けに来ました」 ユウタは荷物の箱を渡すと 「アレ?もう1つなかった?」 男はユウタの後ろの方を覗き込んだが、手に持っている以外の荷物はなかった。 「あれ?…ちょっと聞いてみます」 ユウタはポケットから携帯電話を取り出すと、コウスケに電話を掛けた。 「もしもし?」 「んあぁ?」 「そっちに園川(ソノカワ)さん所の荷物まだある?」 「…あぁ…あ…けど?」 ノイズ音で声が聞き取りにくい。 「なんて?」 「ある…てば!」 携帯電話を一旦胸元に圧し当てて 「あるそうですんで、取りに行ってきます」 と一言残してドアを閉めた。 再び携帯電話を耳に当てて 「どのくらいの大きさ?」 と聞くと 「さっきと同じくらいだけど」 今度は雑音が薄れてハッキリ聞こえた。 「わかった」 ユウタは通話を終えて携帯電話をポケットに戻した。 玄関を出ると、コウスケは呑気に缶コーヒーを飲んでいた。 「ゆっくりしてんじゃねぇよ!」 「まぁ…」 コウスケはうっすらと笑った。 「さっき雑音酷かったよ」 「携帯の雑音…それは盗聴だな」 「…それ、俺が教えたんだろ」 ユウタは鋭く指差した。
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