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ユウタは、もう1つの荷物を持って再び部屋へ向かった。
ドアをノックして部屋に入ると
「ありがとな」
と伝票にサインしてくれた。
伝票を受け取りながら
「あの、最近何か変わったことありませんか?」
とユウタが聞くと、園川はビクッとなった。
「…何故そんな事を?」
「それは…何となくです」
一瞬盗聴機の事が口から出そうだったが躊躇った。
園川は部屋の中をウロウロと歩いたかと思うと
「実は、数日前に脅迫めいた手紙がポストに入れられていたんだ」
と低い声で言った。
「脅迫?」
「あぁ。手紙にはカタカナと漢字で『我々ハ、オマエノ命ヲ憎ム。オマエハ全テヲ失ウ。夜道ニハ気ヲ付ケロ』って」
「警察には?」
「言ったけど、手紙は気味が悪くてすぐ捨てちまったし、『また何かあったときに』とかって、あまり取り合ってくれなかったんだ」
「ん~」
ユウタは腕を組んで唸っていると
「どうして“何かあった”って思ったんだ?」
逆に質問を受けると、驚きに顔を上げた。
「それは…この部屋に盗聴機、または盗撮カメラが付けられている可能性があるからです」
ユウタは声を潜めて言った。
「嘘だろ!?」
園川が一瞬で血の気が引けたのが分かった。
「どこにあるんだ!?」
「…ちょっと電気切ります」
ユウタは部屋の電気を切ると、携帯電話のカメラで辺りを見渡した。
「何してるんだ?」
「こうやるとカメラのライトが写るらしいですよ」
園川も携帯電話を取り出して、部屋中くまなく探したが何も見当たらなかった。
「特に無いみたいですね」
ユウタは部屋の電気を付けて、携帯電話をポケットに戻した。
「じゃあ…」
「違うタイプのカメラか、盗聴機かですね」
ユウタはコウスケに電話を掛けて通話中のノイズを探った。
「ん~、この部屋っぽいですね」
玄関近くのリビングが一番ノイズの音が大きかった。
「…手紙来たの何日前ですか?」
「確か2、3週間くらい前」
「ここ最近、家電を変えたことは?」
「いや…無いなぁ。機械音痴なんだ。部屋にもあんまり家電無いだろ?」
ユウタは部屋にあるテレビやビデオデッキ、エアコンを調べたが何もなかった。
「ん~。盗聴機には電力が必要だから、家電に仕掛けるのがセオリーなのに」
ユウタが呟くと
「関係無いかも知れないが、時計の時間が度々ズレるんだよな」
園川が壁掛け時計を指差した。
時計を外してひっくり返すと
「あった」
ユウタは目を見開いた。
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