狩人のマスク

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軽快に鳴る靴底の音。 ユウタは徐々にコウスケの後ろへ行った。 ユウタはコウスケと同じ様な体格だが、足は遅いのである。 電子マップを片手に 「次、左!」 ユウタが叫んでコウスケは先に左へ曲がって細い路地に入ると一瞬、園川が横切った。 喉の奥で声が出掛かったが、コウスケが路地を飛び出した瞬間に消えた。 「あれ?」 「コウスケくん?」 聞き覚えのある声にユウタは路地を飛び出すと、モモコとアンナ、そして地面にコウスケが転がっていた。 「あっ!」 「ヘリクツ太郎」 「ヘリクツ太郎じゃねぇよ!」 ユウタはコウスケの元へ行くと、ゆっくり起き上がった。 「コウスケくん、ごめーん」 アンナが駆け寄ると 「…うん、大丈夫」 いつものように口数少なく応えた。 「あっ、園川さーん」 園川は後ろの様子を見て戻ってきた。 「ほら!この人っ!」 「ストーカー!」 アンナとモモコが指差すと 「マジか」 ユウタは園川の方を向いた。 「は?…違う違う!」 「確保!」 「ちょっと待て」 ユウタが間に入った。 「本当にこの人か?」 「うん、街灯で一瞬顔が見えてたし」 「背格好も同じ」 アンナとモモコは頷きながら言った。 急に園川は目を見開くと 「あっ!もしかして昨日の夜に…」 2人を指差すと 「ほらー!」 「やっぱり!」 指を差し返されながら詰め寄られた。 「違うって!」 両手で制すると 「あぁ、恐らく違う」 ユウタが横から言った。 「なんで?」 「さっき園川さんの部屋へ調査に行ったんだ。ストーカーが自分の部屋を調査させるか?」 「それは…」 「それより、園川さんの部屋に2度も盗聴機が仕掛けられてたんだ」 「えっ!?どこに!?」 園川がユウタの方を向くと 「昨日と同じ場所です」 ユウタは横目で園川を見て答えた。 「ん~、じゃあ保留って事で」 「でも私たちも部屋を調べさせてください」 「いいよ」 「じゃあ、俺は次の依頼に行くんで、後は宜しく」 ユウタは手を振ると 「コウスケくんならもう行ったよ」 アンナは小さくなっていくコウスケの背中を指差した。 「んだよ!」 ユウタは慌てて追いかけていった。
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