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園川の後を着いて行くと
「ここって…」
「うん」
昨日も来たマンションだ。
「どうかした?」
園川は振り返って聞くと
「それが…」
「しっ!」
アンナはモモコの口を塞いだ。
小声でアンナが
「守秘義務っ」
と言うと
「あ、そっか」
とモモコは口をつむいだ。
園川は自動ドアを開けてエレベーターに乗り、部屋のドアを開けた。
「どうぞご自由に」
手で煽ると、モモコとアンナは部屋に上がった。
「盗聴機があったのは?」
「この壁掛け時計だ」
園川が指差す方を見ると、壁掛け時計が時を刻んでいた。
「アレ?これどこかで見たような」
モモコがボソッと言うと
「あぁ、小畑市の…ホラ、デパートがあるところの系列に“ビーグル”って雑貨店があるだろ?そこで買ったんだ。そこで見たんじゃないか?」
「ん~、人の家だったよ」
モモコは腕を組ながら首をかしげて考え込んだ。
「まぁ、時計の形なんて大して重要じゃないでしょ?」
アンナが言うと、納得いかないという顔で頷いた。
他にあっちこっち調べるも、特に変わったものは見つからない。
「それで、この部屋にどうやって入られたんですか?」
アンナが聞くと
「それは…分からない」
園川は首を横に振った。
「ドアを鍵師みたいに開けたとか?」
「いや、ウチのマンションのカギは並の素人じゃ開けれない構造なんだ」
園川はアンナにカギを見せた。
「ベランダから入ったとか?」
モモコがベランダの窓を指差したが
「いや、いつもカギを掛けてる」
園川は再度首を振った。
「それに、昨日今日で付けに来れるなら、ベランダからなんて行き来が難しい道は選ばないよ」
「そっか」
アンナの言葉に頷くと、モモコは部屋の中を少し歩き回った。
「あっ!じゃあ、合カギで入ったんじゃない?」
モモコが人差し指をたてて言うと
「…そう考えるのが妥当だね」
アンナも同じように人差し指を立てた。
「ズバリ、合カギを作って入られたんですね」
モモコに詰め寄られたが
「いや、このカギは簡単に合カギを作れないんだ」
園川は手を横に振った。
「ん~、分かんないなぁ」
「だんだん園川さんがストーカーどころか、ストーカー被害者に見えてきたね」
2人が嘆いていると
「あっ!でも、入居したときに合カギも貰って、渡した人がいる」
園川は思い出して言った。
「誰です?」
「元カノなんだ」
「名前は?」
「…松下シホって言うんだ」
2人は耳を疑った。
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