狩人のマスク

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シホは自分の両手を組んでテーブルへ置くと 「それじゃあ…ベランダから入ったとか?」 「ベランダは侵入出来ません。両隣のついたての形状上、越すことは出来ませんし、上の階からも入れません」 アンナはスラスラと身振りを付けて説明した。 「じゃあ…合カギを作って入ったとか?」 「カギは照会にかけましたが、合カギを作られた形跡は無かったですね」 アンナが説明すると少し重い空気が流れた。 「でも、合カギ持ってるのシホさんですよね?」 しれっと言うモモコに驚き、アンナはコッソリとモモコの脇腹を小突いた。 「そんな事、あの人話したの?」 明らかにシホの表情が変わった。 「え…えぇ」 「あの人、私を悪者にしようとして…」 シホはボソボソと呟いた。 アンナが不意に 「それにしても、なんで園川さんがこのマンションに住んでるって思ったんですか?」 と聞くと 「えっ!?」 シホは驚いた顔でこちらを見た。 「だって、私たち『ここのマンションに住んでる』なんて一言も言ってないのに『このマンションはセキュリティ万全がウリなのに』っておっしゃってましたし」 「それは…付き合ってる時からこのマンションに住んでたんだから知ってたに決まってるでしょ?」 何かボロが出るかと思ったが、思いの外普通に答えた。 「じゃあ合カギは?」 「…持ってる」 少しシホの表情が曇った。 「でもっ!ストーカーされてるのと関係ないでしょ!?」 「…そうですね」 アンナとモモコは立ち上がると 「分かりました」 と一言残して立ち去ろうとした。 「ちょっと!ちゃんと逮捕してよ!?」 「それは難しいですねぇ」 「どうして!?」 「同じ所に帰るなら、後ろを歩いているのは全く不自然じゃないですよ。ただの思い過ごしですね」 アンナは携帯電話の液晶を見ながら言った。 「でも…」 「ここに引っ越したのは1ヶ月程前だそうですね?あと、容疑者の部屋のカギを持っている」 アンナは一息吐くと 「別件でシホさんを調べさせて頂く事になりそうですね」 不敵な笑顔を浮かべて部屋のドアを開けた。 「ちょっと待って!」 シホが慌てて部屋を出てきた。 「どうかしました?」 「ノゾム…いや、園川に会わせて!そこで話させてよ」 「…わかりました」 アンナはニッと笑うと、モモコはアンナの携帯電話を受け取って電話を掛けた。
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