狩人のマスク

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全員の視線が一斉にシホの方に集まると 「それは…たまたまこの前テレビで盗聴機が時計の裏に付けられてたから…偶然一致しただけだよ」 シホは目を泳がせながら答えた。 「へぇー」 「さっきから私を犯人みたいに言ってるけどさ!証拠はあるの!?」 シホが声を荒げると 「ん~、無いですね」 ユウタは表情を変えずに答えた。 「あっ、そうだ!」 モモコは急に立ち上がって 「この時計に付いてる指紋を調べれば良いんじゃない」 と壁掛け時計を指差した。 ユウタは手袋をはめて時計を外すと 「はい、指紋採取セット」 とコウスケが手持ちカバンからビンとハケを取り出してアンナに渡した。 ユウタが時計を床に置くと、アンナはビンにハケの先を浸けて、時計に中の粉をかけた。 表、裏と粉をかけたが何も出なかった。 「アレ?何もないね」 アンナが小声で言うと 「不思議だな。普通、園川さんの指紋くらい出てきてもおかしくないのに」 ユウタも覗き込んで首をかしげた。 「誰かが消したか」 「俺じゃないぞ!」 園川の声にみんな振り返ると 「まぁ、これは証拠にならないって事ですよ」 ユウタがなだめるのと同時に、シホは若干ニヤリと笑んでいた。 「んー?」 唸るモモコを横目に 「ホントの証拠は、これだ」 ユウタの手に握られていたのは受信機だった。 「こいつの指紋を調べよう」 「ちょっと待って!それならさっき私が触ったの見てたよね?」 シホが前のめりになって言うと 「あぁ、一部始終な」 受信機をアンナに渡して調べさせると、指紋がベッタリ付いていた。 コウスケがカバンからさらに小型のスキャナーを取り出して読み取った。 「これは、シホさんの指紋だよな?」 「そうだよ!見てたでしょ!?触ったんだから付いてて当たり前じゃない」 「あぁ、触ったのは外側だよな?」 「えっ!?」 ユウタは受信機の電池を入れる所を開けた。 「電池とフタの裏を調べてくれ」 「はぁい」 再び調べるアンナを凍りついた表情でシホは見つめた。 「あっ、あるね」 浮かび上がった指紋をスキャナーで読み取ると 「…指紋一致だ」 と勝ち誇った表情でユウタはシホを見た。
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