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ユウタは両手を広げながら
「さぁ、どう説明してもらおうか?」
と言うと、シホは黙り込んだ。
「まだある」
ユウタはその場を立ち歩き
「この盗聴機だ」
と盗聴機を手に持った。
「この盗聴機は最大、半径50mほどの範囲で電波を飛ばすことが出来るそうだ」
「へぇ、結構遠くまで飛ばせるんだね」
アンナが言うと、ユウタは黙って頷いた。
「ただし、出力は10mほどに設定されていたそうだ」
「え~っ、なんで?」
「時計に使う乾電池で1日持たせようと思ったら、10m程度の出力にしなきゃいけなかったんだろう」
ユウタが指を縦に振りながら言うと、モモコは目を大きく見開いて頷いた。
「それじゃあ、犯人は絞れてくるね」
「あぁ。ただし、半径10mとは言ってもこのマンションは壁が厚いから半径5mほどに落ちる」
「あ~、なるほど」
「このマンションの1階あたりの高さは室内の床から天井までの高さと、天井の厚さで約3mだ」
「あっ、天井に近い壁掛け時計に付ければシホさんの部屋にも届くね」
「そう、2階真上でも充分届く」
ユウタは携帯電話を開いて液晶をチラッと見ると
「そして、盗聴機の購入者。店員は守秘義務を忘れてうっかり名前を喋ったらしいが、その時“ソノカワノゾミ”と言ったそうだ」
「あれ?園川さんの名前って“ノゾム”じゃないっけ?」
アンナが園川の方を向いて言うと、返事交じりに頷いた。
「恐らく、園川さんの名前を使って買ったんだろう。しかし“ノゾミ”は女性に付ける名前だから、店員も思わずそう読んだんだろう」
シホの顔は徐々に青ざめている。
「話を戻すが、盗聴機を仕掛ける際に時間短縮のため、こうやったんだろ?」
携帯電話の液晶からシホの部屋の壁掛け時計が映し出された。
「あっ!同じ時計」
アンナが声を上げると
「同じ時計を交換すれば、電池と盗聴機を部屋で付ける時間は短縮される。だから時計の時間がズレてたんですよ」
「そうだったのか」
園川は驚いた表情を浮かべた。
「いずれも、すべてシホさんしか出来ない」
ユウタが詰め寄ると、モモコがユウタを押し退けてシホの前にしゃがみ込み
「全部話してくれませんか?」
と問いかけると、シホはうつむいたままゆっくりと頷いた。
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