milk-dipper

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ユウタはホワイトボードを奥に押しやると 「よし、帰ろうか」 と言い出した。 「それにしても、曲はオリジナルやるの?」 「俺たち曲作りはムリだよ~。仮に出来たとしても楽譜作って、みんなで練習してたら2ヶ月じゃ間に合わないし」 「そっか」 「コピーバンドなら楽譜出来てるし、練習するだけで良いし」 ユウタはマジックを片付けると 「というワケで、カラオケ行こ~う」 ユウタは片腕を掲げた。 「なんで!?」 「アンナの歌声知らなきゃ、何をコピーするか決められないでしょ?」 「あぁ、そっか」 「よ~し行こう」 リオナが先頭を歩こうとしたが 「リオナは帰って良いよ。明日の準備があるでしょ?」 ユウタが引き止めた。 「何か私の美声をみんなに聞かせたくなった」 「準備は!?」 「寝なきゃ良いんだよ」 「勉強は!?」 「1日で左右されるほどヤワな勉強してないよ!さぁ行こう!!」 またいつものようにリオナに先導されて行った。 「へぇ~、山木高校の近くにカラオケってあるんだ」 アンナが目を丸くしていると 「あぁ、高いけどな」 「1時間で1人当たり1000円取られる」 ユウタとヒロキが言うと 「高っ」 とアンナの顔は違う驚きの顔へ変わっていた。 「小遣い日じゃないと来れないからねぇ」 「お金は?」 「出るとき下畑さんに貰ってきた」 ユウタはお金の入った封筒を見せた。 中に入ってパーティルームに入ると 「何歌おうかしら」 とリオナは本を捲っていた。 「おい、あくまでアンナの歌声を聴くためなんだぞ?」 「分かってるって~」 アンナも本を捲ってすぐに歌う曲を選び、リモコンで選曲した。 アンナは解散したバンドのボーカルがソロ活動で出した曲を選んでいた。 アンナの歌声は高く可愛らしいが、力強い声量を兼ね揃えた歌声だった。 「いよっ!!にっぽんいち!!」 「…オッサンみたいな煽りすんなよ」 ユウタはヒロキの肩を殴った。 「ふ~、緊張した~」 「じゃあ次、バラードをお願いするよ」 「はぁ~い」 バラードになると、アンナの歌声は高音から柔らかさを帯びた歌声へと変わっていた。 大音量の中、ユウタはアリサの隣へ行き 「アリサ」 「なに?」 「アンナの歌声、あのバンドに向いてると思うんだが…。ほら、あの深夜番組の『カウント』のエンディングの…」 「ん~?…あぁ、私CD持ってるよ」 「じゃあ明日持ってきて」 「いいよ~」 小声の話し合いが終わった。
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